契約社員も退職金支給の対象になる可能性があります。
契約社員に対する処遇【東京高裁の判決】
2019年2月20日東京メトロの子会社「メトロコマース」の契約社員として駅の売店で販売員をしていた女性4人が、正社員との間に不合理な待遇格差があるとして損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が東京高裁でありました。
高裁は原告の2人が10年前後にわたって勤務していたことから「退職金のうち、長年の勤務に対する功労報償の性格をもつ部分すら支給しないのは不合理だ」とし、4人のうち2人に退職金45万から49万円を支払うように命じました。金額については正社員と同じ基準で算定した額の少なくとも4分の1を支給しなさいとしました。
住宅手当に関しても、生活費補助の側面があり、職務内容によって必要性に差異はないと指摘し、3人への11万から55万円の支払いを命じています。一方、正社員とは配置転換の有無などの労働条件が異なるとして、賃金や賞与などの格差は容認しました。
原告の4人は64~71歳で3人は既に定年退職しています。うち1人は、正社員と非正規との不合理な格差を禁じた改正労働契約法の施行前に定年で雇用形態が変わったため、高裁は請求を退けました。
メトロコマースは1年ごとに契約する駅売店の販売員が2月1日時点で55人いるとのことで、大きな影響が予想されます。ちなみに原告の4人は金額が少ないことを不服とし、さらに上告する予定です。
企業の対策方法
非正規労働者には退職金を支給しなくても良いという認識が日本では一般的です。
ボーナス(賞与)と同様に、退職金制度は会社の裁量に任せられています。従って企業によっては正社員として勤めていても退職金が出ません。
一方、正社員に対して退職金を規定している企業でも、契約社員には退職金がない場合があります。しかし正社員向けの就業規則を契約社員にも適用している場合や、そもそも契約社員向けの就業規則がない場合は、就業規則の内容によっては契約社員にも退職金を支払う義務が生じる可能性があります。
つまり正社員にのみ退職金を支給する企業は、特に注意して就業規則をしっかり整備しておく必要があります。設立時に作ってから何年もほったらかしてある就業規則や、どこかのひな形をそのまま使っている就業規則は非常に危険です。今一度就業規則と雇用契約書の見直しをしましょう。
※契約社員が正社員と同じような仕事をしている場合は、就業規則にしっかりと規定をしても「同一労働同一賃金の原則」から支払いが必要になる場合もあります。