年次有給休暇の時間単位付与(時間単位年休)を導入する場合の労使協定と就業規則

時間単位年休とは

労働基準法第39条で、毎年一定日数の有給休暇を与えることが規定されております。残念ながらこの年次有給休暇について、日本では多くの企業が取得率五割を下回る水準で推移しています。そこで年次有給休暇をより取得しやすくする為、年5日の範囲内で時間単位で年休を与えることができるようになっています。(時間単位年休と言われます。)

1日や半日という年休では、周囲に気を使ってしまうことがありますが、時間単位年休では比較的周囲に気をつかわずに使用できるというメリットがあります。デメリットとしては有給休暇の管理や給与計算が煩雑になります。

 

導入するには

導入に当たっては労使協定を締結することが必要になります。

労使協定に規定する内容は、
1.時間単位年休の対象労働者の範囲
2.時間単位年休の日数
3.時間単位年休1日の時間数
4.1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
の4つがあります。

具体的な内容は以下のとおりです。

1.時間単位年休の対象労働者の範囲
対象となる労働者の範囲を定めます。仮に一部を対象外とする場合は、事業の正常な運営との調整を図る観点から労使協定でその範囲を定めることとされています。ただし、取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。例えば育児を行う労働者に限るというのは取得目的による制限なのでできません。

2.時間単位年休の日数
5日以内の範囲で定めます。前年度からの繰越しがある場合であっても、当該繰り越し分も含めて5日分以内となりますの注意が必要です。

3.時間単位年休1日の時間数
1日分の年次有給休暇に対応する時間数を所定労働時間数を基に定めます。所定労働時間が時間に満たない端数がある場合は、時間単位に切り上げてから計算します。(例えば7時間30分の場合→8時間とみなす。)例えば所定労働時間8時間の会社で年5日の時間単位年休を定める場合は 8×5=40時間の時間単位年休を付与することになります。

4.1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数を記入します(2時間、3時間 など)。
こちらは「1時間」以外はあまり設定しないと思われます。

 

厚生労働省の労使協定及び就業規則作成例

以下は厚生労働省の労使協定及び就業規則作成例です。作成例だけ見ても正直分かりづらい為詳しくはお気軽にご相談ください。営業は一切いたしません。【お問い合わせフォーム若しくはメール➔info@yamamoto-syaroshi.com】

厚生労働省の労使協定作成例
(対象者) 第1条 すべての従業員を対象とする。
(日数の上限) 第2条 年次有給休暇を時間単位で取得することができる日数は5日以内とする。
(1日分年次有給休暇に相当する時間単位年休) 第3条 年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1日の年次有給休暇に相当する時間数を8時間とする。
(取得単位) 第4条 年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1時間単位で取得するものとする。

厚生労働省の就業規則条文作成例
(年次有給休暇の時間単位での付与)
第○条 労使協定に基づき、前条の年次有給休暇の日数のうち、1年について5日の範囲内で、次により時間単位の年次有給休暇 (以下「時間単位年休」という。)を付与する。
(1)時間単位年休付与の対象者は、すべての従業員とする。
(2)時間単位年休を取得する場合の、1日の年次有給休暇に相当する時間数は、以下のとおりとする。
➀所定労働時間が5時間を超え6時間以下の者・・・6時間
➁所定労働時間が6時間を超え7時間以下の者・・・7時間
➂所定労働時間が7時間を超え8時間以下の者・・・8時間
(3)時間単位年休は1時間単位で付与する。
(4)本条の時間単位年休に支払われる賃金額は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の1時間当たりの額に、 取得した時間単位年休の時間数を乗じた額とする。
(5)上記以外の事項については、前条の年次有給休暇と同様とする。